2019/07/12

七夕過ぎたけど織女三星とか、二十八星宿とか、歳差運動とか

そういえばちびうさ絵日記で七夕の話あるのに七夕過ぎちゃったや…と思って、遅ればせながら読み返してネタを探してきました。(旧暦なら来月だしまだ良いかなって…(笑))

今回は天文学というより民俗学?っぽいお話です。
昔の中国の星座の話とか。

(ほとんどWikipediaと、個人の方のサイトやブログを参考にさせていただいて拙い理解で書いてます。こんな説もあるんだ面白いなー、くらいに読んでいただけたらとm(_ _)m)

織女三星

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その中で亜美ちゃんが解説してる「織女三星」

織女はこと座α星こと「ベガ」
中国ではそのすぐ北東にあるゼータ(ζ)星とイプシロン(ε)星をまとめて「織女三星」と呼ぶ、というお話ですが、調べてみたら、同じこと座の中ならゼータ・イプシロンよりもっと明るい目立つ星が他にありそう。

【こと座】


"Lyra constellation map" by Torsten Bronger, used under CC BY-SA 3.0

なんでこの三つの星がピックアップされたんだろう…?と思って検索したら、画像検索ですぐ出てきました。

昔の中国の星図

昔の中国の星図で「織女三星図」というのが出てきました。


織女三星圖」(古今圖書集成·明倫彙編·宮闈典·第三卷)

考えてみたら当たり前なんですが、昔の中国にはそもそも「こと座」が無くて、この三つの星が「織女座」的なくくりだったっぽい。

上記の図は「古今図書集成」という18世紀初頭(1700年頃)に作られた百科事典から。
古来からある書物を集めた百科事典だそう。

古今図書集成 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%A4%E4%BB%8A%E5%9B%B3%E6%9B%B8%E9%9B%86%E6%88%90

じゃあわし座のアルタイルも牽牛座みたいなものがあったのかな?そっちも古い星図で見てみたいな、と探してみようとしたのですが。
この星図、いくつものファイルにわかれていて、1ページにまとまっている場所が見つからない…。

ファイル名で検索をかけていくつか開いてみましたが、「牽牛」っぽい記載が見つからない。
織女三星みたいに画像検索に出てこないかな…とも思ったけど見当たらない。


で、ひょっとして中国では牽牛って名前じゃないのでは…?と思い当る。

そういえば「牽牛 織女」で検索してみたらこちらのページが↓

牛郎織女
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%89%9B%E9%83%8E%E7%B9%94%E5%A5%B3

どうやら牽牛ではなく「牛郎」?

というわけで「牛郎 宿」で検索してみる
(ふしぎ遊戯で星の何かのこと「宿」って言うって読んだのでwこの時点では星座のことか何かだと思ってました。宿については後述。)

図を見るにどうやら星座の位置を解説していそうなブログを発見。(中国語はほとんど分かりません…。)

漢字の見た目とGoogle翻訳を頼りに読んでみた所、どうやら牽牛の中国での名前は「牛郎」、星座としての名前は「河鼓(かこ)」(河鼓二、真ん中の星が牛郎星)

【舊文重貼】牛郎和織女的相會_TG_Lin_新浪博客
http://blog.sina.com.cn/s/blog_9b83ca520101ruk8.html

在中國的星圖之中,「牛郎星」的另一名字是「河鼓二」、即西方的「天鷹座α」;而「織女星」則是西方的「天琴座α」。

『中国の星図では、「牛郎星」の別名は「河鼓二」、西洋で言う「わし座α星」、そして「織女星」は西洋で言う「こと座α星」です』
ってことだと思います。

てことで「河鼓三星」でぐぐる

画像検索でた!!


河鼓三星圖」(古今圖書集成·明倫彙編·官常典·第四百三十九卷)

図の真ん中あたり、縦に三つ並んだ星「河鼓」の真ん中が「牛郎」=牽牛です。

上の方に織女もいますね!

今の星空の写真

夏の大三角の写真、昨年高知を訪れた際に撮ってきた写真があったので照らし合わせてみようかと。

7月の下旬で、夜中にカメラをほぼ真上に向けて撮ったものです。
写真の向きを河鼓三星図に合わせてみました。

上が織女三星、下が河鼓三星

こと座、わし座、はくちょう座と夏の大三角にも線を引いてみました。

ゼータとイプシロン、ちびうさ絵日記では結構容赦なくピンクシュガーハートアタックされてしまいますが…(笑)
八月の七夕が晴れたら「あの子達がゼータとイプシロンかー…」と思いながら見てあげてください(笑)

余談

これで織女三星の出どころも分かってすっきり!…と終わろうと思ったのですが、上述の中国語の記事がおもしろくてがんばって読んでしまったので内容をご紹介。

上記の記事は、「今は牽牛・織女どちらも「牛宿」の位置にあるが、昔は牽牛は牛宿、織女は女宿の位置に見えていたのでは」という説を検証しているみたいです。

二十八宿

まず「宿」(二十八宿、廿八星宿)とは、天球を28のエリアに分割した区分のことらしいです。

二十八宿 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%8C%E5%8D%81%E5%85%AB%E5%AE%BF

二十八宿は、それぞれの宿の西端の星(距星という。必ずしも明るいとは限らない)を基準とし、その距星から東隣の宿の距星までがその宿の広度(赤経差)となる。

古事記―関連資料
http://himiko-y.com/scrp1/sankou.html
→一番上の「2014.08.24(日) [A] 天の川の西岸と東岸の定義」の部分

地上の方位は地軸(自転軸)で決まり、北は北極星の向きである。しかし、古代中国の星座ではそれとは別に、黄道面自体の中に東西南北が定義されている。

古代中国では、白道に沿って28の星を決め、それぞれを「宿」という。

古代中国式星座では、白道自体を4か所で区切り、7宿ごとにグループ化して東・西・南・北と定める。しかしこのグループは、地上の方位とは別物である。

歳差運動

恒星の位置関係は(ほとんど)変わらないはず。

恒星 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%81%92%E6%98%9F#%E5%9B%BA%E6%9C%89%E9%81%8B%E5%8B%95

しかし、他の恒星の見かけ上の位置変化(固有運動)ほとんど変化しないように見える。これは、太陽以外の恒星は地球から数光年以上の離れた場所にあるためである。

恒星たちは、地球の自転によって互いの位置関係を保ったまま天球上を回転しているように見える。

でも、牽牛が牛宿、織女が女宿の位置に見えるためには、この二つの星座の位置が今見えている位置とは逆に入れ替わらないといけない。(今は牽牛の方が女宿に近い位置にある)

それを説明できるのが「歳差運動」という現象。

質問10-7)歳差ってなに? | 国立天文台(NAOJ)
https://www.nao.ac.jp/faq/a1007.html

地球の地軸(自転軸)は、地球の公転面に対して垂直に立っているわけではなく、図のように約23.4度斜めに傾いています。

しかし、地軸が指している方向は、ずっと同じではありません。地軸は、公転面に垂直な方向に対して半径約23.4度の円を描くように移動し、約26000年の周期で一回りしています。

コマを回したときに、コマの心棒が一定の傾きを保ったまま、ゆっくりとその頭を回していく動きと似ていますね。

参考:星空が地軸が指している方向を中心に動くことの解説動画↓

星はどう動いて見える? | クリップ | NHK for School
http://www2.nhk.or.jp/school/movie/clip.cgi?das_id=D0005301503_00000


  • 歳差運動によって、真北の位置がずれ、従って天球上の経度(東西)もずれる
  • ベガとアルタイルが見えるあたりはこの歳差運動によるずれが最も大きい
  • そのため、ベガとアルタイルの東西が入れ替わったように見えた

この辺、頭の中でうまく分からなかったので簡略化して図にしてみました。

※下の図は位置関係も方角も星の数も適当です。
歳差運動(=北極の位置が変わる)によって天球上の経度(二十八宿の場所)が変わるってどういうこと?っていう部分だけ分かりやすくしたかったので…。ただただ自分が理解するため用に図を書きました。

二十八宿が、「天の北極」(地球のばした先)と、円(天球)の外側の方に位置する「距星」を基準として引いた線によって天球を分割しているもの、と理解すると、
例えば下の図が現在の星空だとする。

真ん中の青い丸印が天の北極、
オレンジの点が「距星」として、
ケーキを切ったみたいな形のとこがそれぞれの「宿」、
赤い星「ベガ(織女)」も、青い星「アルタイル(牽牛)」も、両方「牛宿」にある状態と考えてください。(しかも牽牛の方が女宿に近い)


でも、4000年前は「天の北極」(円の真ん中)が緑の丸印の位置だったとしたら

基準である「距星」も、ベガやアルタイルなどの恒星も移動していないのに、
赤い星「ベガ(織女)」が「女宿」のエリアに位置していたことになる。


アニメーションさせるとこんな感じ

オレンジの点「距星」も、ベガ(織女)もアルタイル(牽牛)も動いてないんです。でも天の北極が動くと宿(エリア)が変わる。

色々読んで理解した結果、こういうことなのかなと…
きつねにつままれたみたいな感じしません…?

これが4000年くらいの時をかけて緑の位置から青の位置にゆーっくり移動した、と。

(またこの天の北極が中国では真上ではないのでこの円のフチは地平線とは一致しなくて…とかいろいろ考えるとややこしいと思うんですが、全部簡素化してます!すいません!)

ブログで書かれているのは、

  • 歳差運動は500年以上かけないと観測できないが、中国では周の時代(1000年前)の時点ですでに3000年以上に渡る天体観測の成果が蓄積されており、この位置の入れ替わり現象が知られていた可能性がある
  • これまでの観測結果から牛郎と織女が「動いている」のを知った周時代の天文学者が、いつかこの二つの星が出会うのではと考えたとしても不思議ではないのでは

という説のようです。

特に最後の、実際に観測された現象から二つの星がいつか出会うと考えられたのではという点は、個人の方の説ですが、本当にそうだったら素敵だなと思いました。以下の部分。(Google翻訳で読んでるので間違ってたら教えてください…)

從周朝天文學家的觀測經驗與推測,他們或許會從牛郎、織女兩星過去的移動軌跡,預測兩者的未來趨向,並得到了「牛郎織女二星在未來的某一天將會相合」的推論。


実際には、亜美ちゃんが解説している通り十六光年離れているので出会えません…(´・ω・`)


ちなみにこの歳差運動により、1万2000年後にはベガが北極星の位置になると予測されているようです。そう考えるとだいぶ大きく動くものなんですね…?!

AstroArts: 【特集】七夕 - おり姫星、ひこ星の見つけ方
https://www.astroarts.co.jp/special/2006tanabata/find-j.shtml

べガはこの歳差運動のために1万2000年後には天の北極の近くに移動して、北極星として輝くようになるのです。


で、なんですけど、どうやら見かけ上の東西が入れ替わるという話らしいのは分かったのですが、地上の方位、天球上の方位、古代中国星座の方位が別物らしいのと、私が中国語読めないもので、どっちをどの定義で東、西といっているのかは読めば読むほど分からなくなりました…orz

そもそもこの「天球上の見え方」は私の苦手分野です…中学生の時これ系の単元テストで理科の自己ワーストを記録した思い出w

調べてるうちにどんどん広がってしまって謎にがんばって書いた記事になりましたwでも調べてて楽しかったです!

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